カテゴリ:映画( 35 )

ディア・ドクター

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西川美和/監督『ディア・ドクター』。

山あいの小さな村で人々から慕われていた医師が失踪。
そして今までの嘘が明かされていく。

過疎地の医療という重いテーマながら、わりと軽いタッチで描かれていたように思う。
それは多分現実がそうだからなのかな。高齢化や医師の不在、さまざまな不安をかかえ
ていても、そこで生活している人たちはいつもどんより暗い顔をしているわけではなく
淡々とした毎日の生活の中でやりがいや楽しみを見つけ、人と関わり合い笑いながら
生きているから。

医師の嘘、嘘だとわかっていても協力してきた人たち。住民たちも薄々感じてはいたの
ではないかな。それでもその医師の存在は心の拠りどころで、その嘘は本当に悪いこと
なんだろうか?
事実がわかっても皆、自分に被害を被ることを避けてか医師のことを積極的に擁護もし
ないかわりに、悪くも言わない。

その村に通う製薬会社の人(香川照之)が倒れて、さっと手を差し伸べた刑事に言う
ひとことが心に残る。
「僕となんの関係もないのに、なぜ手を差し伸べたんですか?
 そういうことじゃないですか?」

本当に必要なことって何なんだろう?
人は死ぬまで人らしく生きたいと思うし、自分らしく死にたいと思うのだろう。

この映画を観た人のあいだで賛否がわかれるという最後のシーン。
現実的なストーリーとしてはありえないと思うけれど、彼が現れたのは、希望の象徴と
してではないかと私は思う。そう思えるのは、患者(八千草薫)の表情によるところも
大きいかもしれないけれど。

社会的な問題を社会的になり過ぎず、登場人物ひとりひとりの葛藤や苦悩など人間らし
さを描くことで伝えてくれる西川監督の映画は、やはり興味深いと思いました。
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by niji-no-tane | 2011-04-15 09:54 | 映画

ウルトラミラクルラブストーリー




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映画鑑賞会第3夜。「ウルトラミラクルラブストーリー」。
青森出身監督・横浜聡子+青森出身俳優・松山ケンイチ+オール青森ロケ。
タイトルどおりのウルトラミラクルなラブストーリー。

最初は「字幕つけて〜!」と思ったけれど(笑)観ているうちに細かな言葉のわからなさ
なんてまったく気にならなくなってしまった。最後には自分もすっかりご近所さんのよう
な気分だ。

陽人(松山ケンイチ)は大好きな町子(麻生久美子)と両想いになるためには
どんなミラクルだって起こしちゃう!
秘密の薬だって浴びちゃうし、心臓が止まったって生きることができちゃうのだ!
そんなピュアなミラクルが伝わってくるのか、途中から泣けてきた。
驚きのラスト、クマが陽人になっちゃうのかと思ったけど、それはさすがにないかな?(笑)

せばな〜!!
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by niji-no-tane | 2010-08-15 15:47 | 映画

ヴァイブレータ



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小鬼のいぬ間の映画鑑賞会第2夜。「ヴァイブレータ」。

自分ではどうにもできない心の奥の闇をかかえた女のひりひりするような感情と
言葉や感情を超えたやさしさですべてを受け入れてくれる男。

 この男のやさしさは感情ではなく本能だ。
 やわらかいもの(桃?に聞こえたのだけど)にはそっとふれるように
 やさしく扱ってくれる。

 自分がすこしいいものになった気がした。

寺島しのぶ演じるレイの頭の中の言葉。
言葉は正確ではないかもしれないけれど、こんなニュアンス。

ライオンのお母さんが赤ちゃんをやんわりくわえて運ぶように、傷つきやすいものを
傷つかないように扱える。社会のルールから少し外れたって、そういう本能的な
やさしさを持っているかどうかが人間として一番大切なのかもしれない。
表現できそうでできない包容力のある男を大森南朋が見事に演じてます。すごく魅力的。
この映画は大森×寺島だからこそ成り立っているのかも。

感情や言葉すらも超えた本能からのやさしさによって自分を受け入れてもらえたとき
人は心の中の闇を少し埋めることができるのかもしれない。
そして自分を大切と思えるようになるのかもしれない。
旅が終わってしまう・・・最後のふたりの表情はせつなかった。
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by niji-no-tane | 2010-08-14 15:20 | 映画

フィッシュストーリー




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小鬼のいぬ間に久々の映画鑑賞。
伊坂幸太郎原作・中村義洋監督「フィッシュストーリー」。

売れないパンクバンドの、当時誰にも届かなかった曲「フィッシュストーリー」が
時代を超えて世界を救う?!

奇想天外な設定であるはずなのに、不思議と自分の身近にも起きてしまいそうな
リアリティー。その絶妙さがぐっとストーリーにひきこまれてしまう要因でしょうか?
やはり面白いです、伊坂ワールド。監督の演出も原作の魅力を存分に引き出している
のでしょうね。
時代を超えてつながってゆく人間関係。ひたすら走り続けるような展開でどんどん
謎があかされてゆく。おお〜ここがこことつながってるのか?!と思わずニンマリ。
世の中のなんの役にも立っていないと感じるちっぽけな自分の
フィッシュストーリー=ほら話が、めぐりめぐって知らないところで実は世界を救って
いるかも?!と思ったら勇気が湧いてきます(笑)

大森南朋をはじめとする俳優さんたちも個性的で魅力的、映画の重要な鍵となる音楽は
斉藤和義プロデュースです!

「アヒルと鴨のコインロッカー」「フィッシュストーリー」を観て、伊坂ワールド次に
観るのは「重力ピエロ」かな。これは原作を読んでいるので、映画はどう感じるでしょ
うか?楽しみです。
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by niji-no-tane | 2010-08-13 15:57 | 映画

チョコラ!



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ケニアの地方都市ティカのストリートで、たくましく暮らす子どもたちを追った
ドキュメンタリー映画。
「チョコラ!」というタイトルは、何となく可愛らしい印象を受けるけれど、チョコラとは
スワヒリ語で「拾う」を意味するそうだ。くず拾いをして生活する子どもたちは、侮蔑的な
意味合いを含んだこの言葉で呼ばれている。

徳島出身の松下照美さんという女性が、ここティカでストリートチルドレンの自立支援に
取り組んでいる。その取り組みから生まれたこの映画が、何度か地元新聞の記事で取り上げら
れて是非観たいと思っていたところ、シネアルテで1週間上映されることになった。

松下さんも映画には登場するのだけれど、主役はあくまでも子どもたち。
貧困さを売りにした同情を誘うような映画でもなく、必死に生きる子どもたちの力強さと
瞳の輝きが印象に残る。
私たちの周りにあふれかえっているプラスチックや金属ゴミが、明日を生きるための糧に
なる。彼らにとっては大切な大切な命綱だ。
松下さんのように現地にとんで行って手助けをすることは出来ないけれど、同じ地球に彼ら
のような人達がいることを忘れずに生活していくだけでも、きっと何かが変わってくるので
はないだろうか。
ものを大切にする心を忘れないで、小さくてもできることを考えていきたいと思う。
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by niji-no-tane | 2009-07-16 20:30 | 映画

MILK



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シネアルテにて。
ガス・ヴァン・サント監督、ショーン・ペン主演「MILK」。

1970年代、同性愛者であることを公表して、アメリカで初の公職に就いたハーヴィー・ミルク。
彼が凶弾に倒れるまでの最後の8年間を描いた物語。

この映画を観るまで、ハーヴィー・ミルクという人の存在は全く知らなかった。
彼のような同性愛者だけでなく、世の中の様々なマイノリティの人々が表に立ち、声をあげると
いうことは、死を覚悟して戦うくらいの勇気が必要なのだと思う。
「深刻なことこそ明るく伝えなくては」そんな意味合いのセリフが映画の中にあったとおりに
希望を与えてくれる映画だったと思う。
多くの痛みと戦いながら信念を貫き、小さな力も集まれば大きなムーブメントに変えていける。
閉塞感漂う今の時代でも、心から願って行動すれば、きっと青空が開けてくるに違いない。
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by niji-no-tane | 2009-07-10 16:10 | 映画

トゥヤーの結婚




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ワン・チュアンアン監督「トゥヤーの結婚」

モンゴルの荒野でたくましく生きる女性、トゥヤーの物語。
遊牧民トゥヤーは、怪我をして下半身不随になってしまった夫バータルにかわり
羊の世話やらくだに乗り、遠方まで日に2回の水汲みなど、すべてをひとりでこ
なしている。
過酷な労働に周りからの勧めもあり、バータルと離婚することになる。トゥヤー
の離婚を聞きつけたひとたちが次々に再婚の申込みに訪れるが、トゥヤーが出し
た結婚の条件はなんと「バータルも一緒に生活し養ってくれること」だった。

厳しいモンゴルの自然の中で生きていくことは本当に大変なことなのだろう。
結婚してそれぞれに男としての役割、女としての役割を果たしてやっと生活が
なりたっていくのだろうと思う。
結婚の条件にバータルとの同居を申し出たことも偽善ではない。離婚が苦渋の
決断であり、ふたり、そして子供たちが、本当に愛し合っていることが物語を
最後まで観ていくと強く伝わってくる。夫バータルにしても、離婚した妻につ
いて新しい夫に養ってもらうなど、普通は考えられないことだろう。それほど
にやはり荒野での暮らしは厳しいのだ。
最後には旧知の隣人センゲーとの結婚が成立するが、婚礼の席で祝い酒を飲み、
荒れる気持ちをおさえきれないバータルと、そっと席を立ち人知れず涙を流す
トゥヤー。これが最良の方法と頭では片付けていても、やはり心は穏やかでは
いられない。ふたりの心は本当に強くつながっている。

世界中にはたくさんの場所があって、どの場所で生きるかによって、考え方も
全く変わってくる。この映画を観ていると、地球は実に広く、暮らしも生き方
もさまざまだということをあらためて感じる。
バータルもセンゲーも俳優ではなく、本当の遊牧民だそうだ。バータルとは
「英雄」という意味。優しさと強さを併せ持つ風格を感じるが、今は砂漠化し
て生活できなくなった牧草地を移住して、商人として生活しているらしい。
地球の変化は自然とともに生きる人々に真っ先に影響を与えているのだなあ。
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by niji-no-tane | 2009-05-09 08:08 | 映画

アヒルと鴨のコインロッカー



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中村義洋監督/伊坂幸太郎原作「アヒルと鴨のコインロッカー」

ひとりの大学生が新生活を始めるべく越してきたアパート、そして口ずさんだ
ボブ・ディランの「風にふかれて」の歌から物語が始まっていく。
というか、このときすでに物語は始まっていて、3人の物語に彼が飛入り参加していく。
3人の若い生真面目さ、純粋さゆえの悲劇。回想する物語には仕掛けがあって、徐々に
謎も解けていく。なぜ「悲劇は裏口から起こる」のかも。
彼が飛入り参加したことで、行き場のなかった物語に小さな穴が開いた。
3人の物語を神様とともにコインロッカーへ閉じ込めて、またそれぞれに歩いていける
だろう。

不思議なタイトルが気になっていて何気なく観た映画だったけれど、思いのほか引き
込まれてしまった。
微妙な関係であるはずの男の子ふたりの、強い友情が切ない。
3人の不思議な物語を深刻になりすぎず受け入れていく「彼」の存在も重要。
謎の男「河崎」を演じた瑛太、すごく良いです。あまり観たことなかったけれど
いい俳優さんなんですね。松田龍平はやはり独特の存在感あります。

ただ、深夜にテレビで放映されたのを録画して観たので、途中ちょこちょこCMが入る
のと、エンドロールなしで、おはなしが終わったらスパっと切られてしまって、良い
映画だったのに消化不良の感。
出演者や曲の紹介、わからないながらもスタッフの名前などぼーっと眺めながら、バ
ックに流れる音楽を聴いて、あれこれ想いを巡らせながらゆるゆると現実に戻って行
きたいのに・・・やっぱりエンドロールは大切ですねえ。
原作も読んでみたいです。
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by niji-no-tane | 2009-05-05 13:56 | 映画

歩いても 歩いても



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是枝裕和監督「歩いても 歩いても」。

久しぶりに集まった家族が織りなす、なんてことないある夏の1日。
特別な事件が起こることもなく時間が過ぎていくようだけれど
それぞれひとりひとり、ほんとの気持ちは胸の奥に。
家族だからこそ見栄をはったり、反発したり。
微妙な距離感、心のかけひき。それぞれの想いが絡まり合う。
ごく普通に暮らしているひとでも、なにかしら小さな秘密くらい
持っているものだ。
あまりに淡々と、そしてあまりに誰にでもありそうな風景が
ちくりちくりと胸を刺す。
生きているときには許せなかったことも、亡くなってからやっと
すべてを受け入れることができるのだろう。
結局は自分もまた同じように年を重ね、時代は巡っていく。

今、この映画を観るのにちょうど相応しい年齢、かな。

海へと続く坂道の街も家族の歴史を刻み込んできた古い家も
良い雰囲気でした。
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by niji-no-tane | 2009-04-29 00:35 | 映画

Into The Wild

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映画館で自分のための映画を観るのは、なんて久しぶり!!
カウリスマキ監督の「過去のない男」を観て以来。その時は下の子が
お腹の中にいたような気がするので、5年ぶりくらい?!
廃業した映画館のとなりあった2館を、ひとつは映画館、ひとつはカフェ
として復活したシネアルテで。
映画館は普通の座席ではなく、オーナーさんが買い集めたいろいろな
ソファがゆったりと置かれています。一番のりだったので、あちらこちらの
ソファに座ってみて、座り心地をしっかり確認。
プライベート映画館のようです^^

すごく観たかった
「イントゥ・ザ・ワイルド」。 ショーン・ペン監督。

裕福な家庭に育ち、何の不自由もないかにみえる青年クリス。
大学を卒業した彼は、生きる真の意味、本当の自分を見つけるために
誰にも行き先を告げず旅に出る。
誰も頼らず何も頼らず自分だけの力で生きる。そして彼はアラスカの
荒野へ挑んでゆく。

こんな旅ができる勇気を持つクリスを羨ましく思う。
しかし、クリスのような旅ができなくても、人は誰でも葛藤や心の旅を続
けながら自分自身や生きることの意味を追い求めているのではないだろうか。
そして長い時間をかけ、おぼろげながらでも、それを発見していく。
彼は自分を極限の状況へ身をおくことにより、希望をつかもうとした。
「幸福が現実となるのは、それを誰かと分かち合ったときだ」という
ひとつの答えを見つけた彼が、もし戻ってきていたならば、きっと様々な
ことを許すことができただろう。

クリスに自分を重ね合わせたり。成長してきた息子とだぶってきたり。
理想のオブラートでくるまずに、ありのままの彼を見つめることができる
だろうか。もう少し息子が小さかったら、こんな気持ちは持たなかっただ
ろう。クリスと同じ20代でこの映画と出会っていたら、どんな風に心が動
いていたのだろう。
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by niji-no-tane | 2009-01-29 14:50 | 映画