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父、帰る

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ロシア、アンドレイ・ズビャギンツェフ監督「父、帰る」。
失踪していた父が12年ぶりに家族の元に帰ってくる。幼い頃の父の記憶もあまりなく、あるのは古い写真だけ。父とふたりの息子は一緒に旅に出る。が、多くは語らず、理不尽で横柄な父の態度に息子たちも反発し、12年間の溝はますます広がっていくばかり・・・。父が息子を愛していたこと、また息子たちも本当は父を恋しく思っていたこと。父が息子を助けようと事故死した時やっと、心の奥では深く繋がっていることを理解する。

テーマは重たく、決して明るい感じではありませんが、後からじんわりと心に響いてくる美しい映画でした。今も様々な場面を思い出したり、ぼんやりと映画の中の世界に想いを巡らせています。
映像がとても美しく、全体的にとても静かで、動きがあるのに静止画を観ているよう。カメラのアングルやぼかし方などもすごく美しいのです。
そして、最後に今までの光景がモノクロの写真として何枚か写るのですが、この写真がすごく効果的。写真自体もとても魅力があるものだし、この写真を見ることによって、作られた物語を見ているのではなく、実際の父子の過ごした短い時間を、すぐ側で見ていたような気持ちになります。

メイキングの中で監督が話していた言葉の中にも、とても心に残るものがあります。
「生まれては去ってゆく時の中で、感じたことや幸福の断片が写真として残される」
「消え去った苦しみを振り返った時に、苦しみと思っていたことには楽しい側面も
 あったのだと気付く。たとえ苦しんでいる間でも幸福は訪れている」

自分自身の「心に残る映画ランキング」のなかでは、かなり上位の作品になったと思います。
by niji-no-tane | 2007-02-14 16:09 | 映画
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