沢木耕太郎氏 講演会

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文学書道館の館長である瀬戸内寂聴さんが親交のある作家を招いて催される寂聴招待講座。
今年の第1回目はなんと沢木耕太郎さん!!私が沢木さんを好きなことを知っていた椿ちゃんが誘ってくれ、どきどきしながら今日を迎えた。
自分でも予想以上に緊張して、まるで憧れの先輩に会いにゆく女子高生のようで(笑)

もっと濃い感じの人かな、と思っていた沢木さんはとても透明ですがすがしい印象で、今年60歳とは思えない、青年のような溌溂としたフットワークの軽さを感じた。
思えば、ノンフクションの作家として様々な人に会い、深く入り込んでいくには、アクの強い人ではダメなのかもしれない。相手が壁を作らず気持ち良く心を開いてくれるような、しなやかな感性を持つ人でないと出来ない仕事なのかもしれない、と思った。
実際には相当に強い意志と信念を持った人なのだろうと思うけれど、そういうところを前面に出さない軽やかさが、さらに印象を良いものにしていた。

1時間半の講演では、最近知り合った登山家の人の話から登山になぞらえて、人の生き方をソロ(個人)とパーティー(団体)に例えての話が軸となり、その登山家との話、映画にまつわる話、仕事や家族、実に話題が多岐に渡って、軽妙な語り口であっという間に時間がたってしまったのだけど、思い返してみると、かなり内容の濃い講演だったと思う。晩年の映画作りにおけるクリント・イーストウッドと黒沢明監督の違い、というのも興味深かった。イーストウッドが70歳を過ぎて尚、何故良い映画を作り続けることができるのか・・・役者が自分の個性を演技を見てもらいたいという、それを受け止めようというイーストウッドの柔軟さがあるから、という話。
沢木さんも今、ノンフィクションではなく小説2作目を執筆中。ということで、ご自身が新しい可能性をとても楽しんでいらっしゃる様子だった。沢木さんもイーストウッドと同じように、いつまでも柔軟な感性で人生を楽しんでいく方なのでしょう。そんな様子が身体全体からあふれていて、私にとってもとても励みになったように思います。

私が沢木さんの作品に出会ったのは、20代はじめの頃。沢木さんが世界を陸路で旅した時の経験を綴った「深夜特急」。通勤の電車の中で夢中になって読んで、すごく心に響いて、他のルポルタージュの作品も随分読みました。
「深夜特急」を読んで実際に同じような旅に出たわけではないし、何か形が残っているわけでもない。もう大分前に読んでいるので、どの本がどうだった、というのも今は詳しく書くこともできないのだけれど、人の奥深くに入り込んで行く沢木さんの視線や物事のとらえ方、とても興味深く、私に確実に影響をあたえ心にしみついていると思うのです。

今回はサイン会もなく、それでもどうしてもこの本にサインしてもらいたくて出口で待っていると、沢木さん登場!!一緒にいた椿ちゃんとうららさんが背中を押してくれ、憧れの沢木さんと握手。そして抱えていた「深夜特急」に快くサインしてもらい、
今思えば図々しくも、さらにもう一度握手してもらい、すると椿ちゃんが一緒に写真まで撮ってくれて、私はもう舞い上がってボーっとした状態で沢木さんにお礼を言って、
興奮状態で帰途についたのでした。
家に着くと、これまた興奮状態で講演内容を夫に喋りまくり、サインを見せてこの本がどれだけ私にとって大切か、ということを滔々と語り・・・(笑)
仕事を抜け出していった講演会でしたが、夫も「本当によかったね。すごく嬉しそう。」と言ってくれました。

若い頃に感銘を受けた本、それを書いた方に実際お会いすることが出来、その本に実際にサインを入れて頂く。そのことが本当にどれほど大きな意味を持つことか!!
この手が世界を回って、多くのものを見て、多くの人と出会い、言葉を紡ぎ出すのかと思うと、本当に感無量だった。
人生の中でほんの一瞬でも沢木さんとクロスする瞬間があったということ、とても意味のある貴重な時間だったと思う。今日の日に感謝して、また明日からを大切に。
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by niji-no-tane | 2007-04-30 01:44 |
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